2009年3月31日火曜日

学習会の最終案内

学習会の最終案内をさしあげます。

・学習会の内容:地方自治体の財政について
行政改革によって地方自治体の財務状態を改善することが当然のように語られている。そのために市職員のリストラ、民営化、福祉・介護の支援金削除が敢行され、財務状態がよくなってきたという当局の説明をそのまま受け止めていいものなのか。
行政改革、財源確保というのはは企業ではない地方自治体において、サービスを受ける住民にとってどのような意味を持っているのか。
国の施策や計画という制限のなかで、地方自治体の首長の思想・意思というものはどのように実現可能なのか。

このような疑問に対して、地方自治体の財政の仕組みや財務表の見方など、地方自治体の財政を考える基礎的なところからお話いただきます。
勿論、そこから川崎の実情に対する質疑応答の時間もあります。

なお会場の都合があり、参加を希望される方は事前に御連絡ください。

・日時:4月4日(土) 午後15時(時間厳守)
・場所:日本キリスト教団 川崎教会(JR川崎駅 徒歩10分)
http://local.yaho・o.co.jp/detail/spot/4db38d1c288dae0cfcb2a6aff818e3d7/

・講師の紹介
沼尾 波子さん(川崎市の税財政懇談会委員)
日本大学経済学部教授。
慶応大学大学院経済学研究科博士課程単位修得退学。
慶応大学経済学部助手、(財)東京都政調査会研究員を
経て、2008年より現職。専門は財政学・地方財政論。
著書(共著)に『公私分担と公共政策』(日本経済評論社、2008年)、『苦悩する農山村の財政学』(公人社、2008年)、『ケアを支えるしくみ』(岩波書店、2008年)、『希望の社会保障改革』(旬報社、2008年)

主催 住民参加の市政をつくる川崎市民の会

崔 勝久
SK Choi

skchoi777@gmail.com
携帯:090-4067-9352

2009年3月30日月曜日

まちづくりの視点ー京都の「新景観条例」に参加して-を学ぶ

みなさんへ

すっかりと春らしくなりましたが、寒さは厳しいので、お気をつけて。

昨晩、京都の「新景観条例」から学ぶまちづくり、という集会に出席しました。二人の講師の話を伺って感じたことを記します。

1.日本では集合住宅を法で制限することは限りなく困難で、マンションメーカーは法の網の目をくぐり周辺住民に違和感をあたえるようなもの(その最たるものは高さ)を際限なく作り続けている。それを増長して
いるのが規制緩和だが、そのような社会にあって京都で「新景観条例」が成立したのはなぜか、そこから学ぼうという集会でした。

2.「観光都市」京都の特殊事情があることは事実のようですが、最後に講師がいみじくも説明してくれたように、京都の各地域で、乱立する大型マンション計画に住民がこれ以上我慢できないという「怒り」から、地域のまちづくり宣言・憲章が作られ、それが線となって大きなうねりとなり、保守市長の下であっても議員
全員の賛成で条理が成立したとのことです。

3.講師は結論として、「景観・まちづくりの問題は、究極的には私たちの住む都市(社会)の根本問題を問うものである」と指摘します。そして「住民は地域の自治・まちづくりのにない手、地域の主権になる」ことを強調します。

4.まちづくりとは、街の在り方を問うもので、長期的な都市計画の哲学がなく際限なく大型マンション建設を推奨・黙認していることは経済(市場)を優先する新自由主義であり、そのことと住民の教育・福祉がないがしろにされていることとの関連性を強く感じました。多くの市民運動が協力し合い、真に住民が地域の主権者となることの仕組みを構築すべきだと改めて確信しました。外国人もまたその主権者であることはしっかりと認識されているのか、絶えず運動のなかでも検証される必要があるようです。

講師は、中島晃弁護士(京都のまちづくり運動に献身、まちづくり市民会議事務局代表)と、日置雅晴弁護士(数多くの建築紛争や開発問題に関わり、現在、川崎南高校問題の住民訴訟の代理人)のお二人。

主催は、まちづくり・環境運動川崎市民連絡会、後援は、景観と住環境を考える全国ネットワーク。




崔 勝久
SK Choi

skchoi777@gmail.com
携帯:090-4067-9352

2009年3月26日木曜日

西川長夫さんの講演録「多文化共生と国内植民地主義」

西川長夫さんの講演録「多文化共生と国内植民地主義」(2・2横浜国立大学、監修:加藤千香子教授)と質疑応答の内容が公表されました。

望月さんのHPより引用します。
HPには西川さんの講演ついての感想や、川崎のフィールドワークの報告書などが記載されていますので参照ください。

「新植民地主義(ネオ・リベラリズム=新自由主義)を考え、行動する」
SYNDROME(http://homepage3.nifty.com/tajimabc/index.htm)


崔 勝久

2009年3月21日土曜日

学習会で検証する内容について

学習会で検証する内容についてお知らせします

地方自治体の財政の学習会で、これまで新聞、TVなどで知るようになった
「常識」を疑ってみませんか。以下の1-5は例であり、<>内は当然の
こととされている内容、その下はそのテーゼに対する諸意見です(一般論)。

4月4日の沼尾さんとの学習会では、このようなことを念頭に置き、
お話を伺いたいと思っています。

1.人件費削減はいいことですか。
<公務員の数は多いので、削減する必要がある>
・川崎の場合、人口比で公務員の数は全国でも多く、人員削減してきたこと
で財務状態はよくなったということだが、それによって住民へのサービスの
低下はないのか、公務員の数が多い、少ないと判断する基準は何なのか。
・残された職員の業務が多くなり、精神的なプレッシャーで病気になったり、
自殺する人が毎年出るというのはどういう問題なのか。
・住民サービスを徹底するために職員を活かす仕事を増やすという方向で
考えられないのか。
・民間でできることは民間ですべきという小泉の構造改革の思想によって、
民営化を徹底化することはすべての分野で認められるのか→保育園の倒産
の例、学童保育を廃して作ったわくわくプラザ、市営バス、清掃・・・
・定年まで一定の昇給が保障されているシステムの見直しは地方自治体で
できないのか。

2.地価があがり環境によく、便利になる地下鉄建設はいいことですか。
<川崎を大都市にするために、市として2000億円を投資する価値がある>
・横浜の例を見ても、まず採算上、本当に成り立つのか(必要なのか)。
・北部の人に便利で必要というが、バス路線を増やす方がはるかに便利。
・2000億円を市として出す価値があるのか→福祉・教育・医療への振り
替えはできないのか。
・地価が上がり固定資産税が増えることを前提にしているが、そうでない
可能性もあるのではないか。


3.川崎の人口を増やすことはいいことですか
<市民税がふえ、歳入が増える>
・規制緩和によってマンションを増やすようになっているが、働く女性の
環境をよくすることが並行して計画的になされているのか。
・東京で働き川崎で住む「川崎都民」が増える傾向はこのまま続くのか。

4.大企業の誘致・優遇は必要なのですか
<大企業が川崎に来ないと川崎はさびれる>
・大企業誘致に際して、ローカルコンテンツ法のように地元の活性化、
雇用促進が条件として課せられているのか。
・大企業といってもいつまでも川崎にいるとは限らず、また収益が
出るとも限らない→中小企業への働きかけ、育成が疎かになる。

5.国政とは別に地方自治体独自の動きは可能jなのですか
<地方自治体の独自性、自律性が最近強調されている>
・道州制に移行する問題点はないのかー政令都市との関係は。
・福祉・教育・医療分野での地方自治体のやれる範囲があるのでは。

以上の内容の他に、沼尾さんに説明してほしい内容がある場合は、
私の方にメールをください。参加を希望される方は事前に連絡を
お願いします。

「住民参加の市政をつくる川崎市民の会」事務局
崔 勝久
skchoi777@gmail.com

春闘と国内植民地主義ー朴鐘碩

日立に勤める朴鐘碩の「春闘と国内植民地主義」と題する投稿
の抜粋です(「外国人への差別を許すな川崎連絡会議」掲示板より、
http://homepage3.nifty.com/hrv/krk/index2.html)。


形式的には民主的な手続きで運営されている大企業の組合の
実態がよくわかります。組合のメンバーが自由闊達に組合の
あり方について、その方針決定過程にどのように参加するのか、
問われているように思います。政治の世界をはじめ、広く
日本社会全体にわたって同じような現象があるようです。
形としては保障されているのに、言いたいことが言えない。
それをどのうように突破できるのか、変革できるのか・・・


崔 勝久
SK Choi

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春闘と「植民地主義」  朴鐘碩
 
経団連・人企連に加盟する企業の経営者によって非正規・派遣労働者が一方的に解雇される中で、経営者と企業内組合幹部は、正規労働者(組合員)の賃上げ・雇用維持の交渉を始めました。交渉の中心人物は、組合費を払っている一般組合員ではありません。
『日本における多文化共生とは何か』(新曜社)に書きましたが、日立労組(有野正治委員長・組合員35,000人)が組合員の意見・要望・質問をどのような方法で無視しているか、その一例を紹介します。

「職場討議資料」として「電機連合第95回中央委員会議案に関する日立労組見解」(HITACHI UNION NOW NO.954号)2009.1.16が配布され、職場評議員から意見・要望を求める以下のようなmailが組合員に展開されました。
「お配りするHITACHI UNION NOW 954号に記載されています、電機連合第95回中央委員会議案および議案に対する日立労組見解に関しまして、ご意見・ご要望がありましたら1月27日(火)までにお願いします。」
私は、職場組合員と執行部に以下のような質問をmail展開しました。
(略)


日立労組から誠実な回答はありませんが、それでもこのようなやりとりを何年もしつこく続けています。

「今後闘争の推進に職場組合員との認識ギャップが生じる恐れがあります。・・職場組合員との認識ギャップが生じさせないよう、情報の共有化と連携をはかり、あらゆる事態に対応できる体制の構築により、この厳しく難しい闘争を全力で推進していきます。」(NO.955 2009春闘要求に関する中執見解)と書かれていますが、組合は質問に応えず、組合員の意見・要望を平気で無視します。組合幹部自ら「認識ギャップ」を深めています。

日立製作所労働組合は、組合員の声を聞かず、有料の機関紙(HITACHI UNION NOW)に「結論」を掲載します。「職場討議資料」となっていますが、議案は、組合員に一切説明することはなく、職場で討議することもありません。
それでも一応組合員に意見・要望を求めるという「民主的」なプロセスを経ています。しかし、その実態は、上から予め「結論」が出され、組合員から意見・要望が出されてもその声を反映することはありません。意見・要望は、都合よく選別され、組合(幹部・役員)への批判、問題と矛盾は隠蔽します。労働条件は、組合幹部と経営者幹部で全て決定します。

スト権委譲投票は、ソフト支部(組合員約1,500)で90%を越えていますが、委譲率も90%近い状況です。しかし、各職場区の投票率は公開しません。私の職場区では管理職がいる前で「投票しろ!」という組合役員の「恫喝」はなくなりましたが、まだ他職場でその効果があるせいなのか公職選挙の投票率はるかに上回っています。普段、組合活動に関心もない、言いたいことも言えない、沈黙している組合員は「投票させられている」のか、「投票を拒否する自由もない」のか、投票・委譲率は異常な高さです。

組合員は、私のmailを読んで同調するよりも複雑な気持ちを感じているようですが、業務に追われて、意見・要望を出すことはなく、おかしいと疑問があっても沈黙しています。
経営者と正規労働者の給与から天引きされた組合費で生活している組合幹部は、「労使一体・協創」(「共生」)を謳い、組合員に「共生」を「強制」しています。職場は、ものが言えない、言わせない「暗い」環境になっていますが、「明るい活気ある職場」にするために上司と数人グループで昼食を取りながら懇談会が定期的に開かれます。昼休みを利用した懇談会は組合員が普段話す機会のない部長に(建前として)「言いたいことが言える」唯一の場でもあるようです。(ほぼ)全員参加するものの、積極的な姿勢で臨む組合員は少ないようです。(「できれば出席したくない」と感じている組合員も少なくないようです)
経済不況で、経営者責任よりも労働者一人ひとりの「(精神的な)頑張り」と「自己責任」が問われるような雰囲気が漂い、正規労働者は、余計なことは考えず黙って働いています。
上から「風通しのよい明るい活気ある職場」を課せられるため、職場の矛盾、問題点を提起できる組合員(正規労働者)は皆無の状況です。
連日、非正規・派遣労働者の解雇、ジョブレスの実態がマスコミ(の組合も連合に加盟し矛盾と問題がある)に報道される中で、正規労働者(組合員)をないがしろにした連合春闘は続いています。

2月2日、横浜国立大学で開かれた西川長夫立命館大学名誉教授の「多文化共生と国内植民地主義」を聴講して、私は「強者の多文化共生は、問題点・矛盾を隠蔽し、差別・抑圧を助長する。人間(労働者)を分断・管理・支配し、国民国家と利潤優先企業(資本)の論理を強化する」と(連合の)春闘を通じて改めて実感しています。
正規を含め劣悪な労働条件・低賃金で働く非正規・派遣・外国人の労働市場は、経団連・大企業資本にとって「広大な植民地」と言えます。

2009年3月20日金曜日

「住民参加の市政をつくる川崎市民の会」への呼びかけ

「住民参加の市政をつくる川崎市民の会」参加の呼びかけ


私たちは、阿部市政が福祉に力をいれてきたこれまでの革新市政を批判する立場から構造改革を断行してきたことを知っています。行政改革に着手し、民営化を進め、市職員の数を減らして福祉に力をいれるということでしたが、保育園の待機児童や入居できない老人ホームの問題など何一つ解決できていません。その上、規制緩和によって、企業が保育園を経営することを奨励・支援してきましたが、その企業が昨年倒産しています。また大型マンションが続々と建築され、それによる深刻な環境破壊も報告されています。

川崎市議会は、大型ショッピングセンター建設を目論んだのか、県立南高校跡地を病院・保育園・老人ホームに活用することを条例で禁止しました。県は川崎市長の思惑に沿って校舎解体に踏み切ったのですが、その過程でアスベスト問題を引き起こしました(http://www.owat.net/rinkaibu-mirai/)。この問題は阿部市政の街作りの姿勢を象徴しています。このような地下鉄や大型ショッピングセンター・マンションの建設及び大企業の誘致・優遇政策に、川崎を大企業依存型の大都市にしていこうという現市長の考え方が窺えます(地下鉄建設に関しては国の決定を待つばかりで、2000億円を一般予算から捻出することが既に決められています)。

しかし川崎をどのような街にするのかということは誰が決めるのでしょうか。市民から選ばれた市長が市会議員と諮って決めていくのでしょうか。川崎市議会の委員会は、議会基本条例の作成にあたって、より議論を深めるために非公開で検討することを決めたそうです!一旦市民から選ばれると、首長や議員が自分たちの思惑で政策を決定するのであれば、それは形式的には代議員制度に基づく民主的なあり方に見えて、専制政治以外の何ものでもありません。多くの問題を抱える市民は政策決定過程に参加できず、ただ4年に1度選挙をするのみで、今の地方自治の仕組みには自分たちの意志が反映されていないということを実感しています。

戦後60年の形骸化した地方自治の在り方を根底から見直そうではありませんか。私たちは自分たちの住む街を、全ての住民が自由に意見を述べ合い、地域にある問題を当事者として責任をもって解決するような、開かれた地域社会にしたいのです。市長や議員に全てを委ねるのでなく、また上から与えられた官製の組織でなく、住民が自ら発意して「住民参加の市政」の仕組みをつくるのです。そこではいかなる立場の人も排除されることはありません。勿論、住民の国籍が問われることはないでしょう。それがどのようなものなのか、学習会を重ね、多くの方と意見の交換をしながら、「住民参加の市政」の思考を深めてその実現を求めていきます。みなさんの参加を心よりお待ちしています。

住民参加の市政をつくる川崎市民の会
川崎市川崎区小川町11-13 日本基督教団川崎教会付
電話:090-4067-9352、Fax:044-599-0609

2009年3月17日火曜日

学習会のお知らせ

みなさんへ

すっかりと春らしくなりました。みなさん、お変わりありませんか。
「住民参加の市政をつくる川崎市民の会」を立ち上げました。
目の前の選挙に先だって、そもそもどのような地域社会を求めるのか、
それによって何を実現するのか、この点をしっかりと考えようとして
新たな市民の会をつくりました。

選挙で選ばれた首長や市会議員が自分の思惑ですべてを決めて
いくのであれば、代議員制度による民主的な手続きであっても
それは、選ばれた者による専制政治です。私たちは住民自身が
当事者として自分の住む地域の問題に責任をもって関わる仕組みを
つくるべきだと考えます。

代議員制度を所与のものとせず、戦後60年の地方自治の在り方を
根底から変えていきたいと願います。そのためにはしっかりと自分で
考え、その意見を交換しあうとが重要だと思います。現場で活動を
する者と、専門分野の研究者と一緒になって現実を直視してその
本質的な問題点を把握し、現実の活動に活かしたいのです。

第一回目は、地方自治体の財政について学習会を持ちます。
行政改革とは何か、福祉予算の削除に対して批判する提案は
財政の在り方とどのように関連するのか、言いかえれば、
福祉を重視してきた革新市政が財政を破綻させたという言い分
に対してどのような主張ができるのか、様々な政策提案に先立って、
この地方自治体の財政とは何か、しっかりと踏まえたいと思います。

講師:沼尾波子さん(日大教授、川崎市の財税制懇談会委員)
主題:地方自治体の財政とは何か場所:川崎教会
日時:4月4日(土)午後15-18時(質疑応答の後、二次会をもちます)

2、3回目の学習会は、以下の両名の承諾を得ました。
日程・場所は未定です。

齋藤純一さん(早稲田教授) 「民主的な公共性について」
小原隆治さん(成蹊大学教授)「住民自治の在り方についてー区民協議会の可能性」

主催:住民参加の市政をつくる川崎市民の会
事務局 川崎市川崎区小川町11-13 日本基督教団川崎教会付
電話:090-4067-9352, Fax:044-599-0609
参加費 1000円

2009年3月9日月曜日

ハンナ・アレントに触れて

みなさんへ

御無沙汰しておりました。本日、3週間ぶりに無事退院いたしました。 下肢の痛み、しびれは完全にとれました。「杖代わり」になってくださった 方々、ありがとうございました、多くの方にご迷惑をおかけし、また御心配 をおかけいたしました。背骨を削る手術だったので、まだ背中の 腫れは残っているのですが、これも治ると思います。御安心ください。

入院中に読もうとハンナ・アレントを持ち込んだのですが、ベッドで寝ながら 読める本ではなく、2-3日してからは対話室で読み始めました。 『人間の条件』と『革命について』の2冊を大変、興味深く読みました。

まずは彼女の「洞察力」「総合的な判断力」に驚きました。社会科学者の引用 するイエスは自分の信仰に結びつける場合が多いのですが、彼女のイエスの 言葉の引用の仕方は私には納得できるものでした。後で、彼女が哲学の 他にもブルトマンの下で研究したということを知り、納得です。

『革命について』は退院間際まで読んで、最後の章が終わるのが寂しく、 時間をかけて読みました。こんな経験は初めてです。フランス革命、アメリカ革命 について論を深めていくのですが、自分の浅い知識と理解が次々とひっくり 返されていくようでした。

彼女は革命に言及しながら何を重要なものとして考えていたのか、その後の ロシア革命を含め何を失敗と捉えていたのか、それはちょうど私が川崎の 市長選に備えて、これまでの形骸化された代議員制度に代わるものとして、また 住民として当然のこととして外国人も参加するものとして、「区民協議会」の創設 について思いを巡らせていたときでもあり、引きずり込まれるように読みました。

彼女は、人民の自発的な組織(評議会)や、アメリカにおける小さな単位の 行政区での集会がつぶされていったことが革命の失敗とみなします。それを つぶしていった革命推進派や政党、及び代議員制度が人民の「公的な自由」 の空間を無くしていったと主張します。

川崎の市長選にあたって私は以下のことを考えてきました。
1.地方公務員の国籍条項撤廃(=「当然の法理」の実質的な粉砕)
2.街作りの根本的な考え方として地下鉄や大型ショッピングセンターを
  優先するようなこれまでの計画の白紙撤回
3.2に代わり、保育園や老人ホームの抜本的な改革
4.地方自治の新たな仕組みつくり(「区民協議会」の設立)
5.「区民協議会」においては公選公募、夜の会議、月給の廃止、外国人の参加

このような問題意識の中でハンナ・アレントを読みながら私は、川崎市の市長選で 問うべきことは、彼女がいう「統治参加」「公的自由」「公的幸福」といった、これまで 人類が抱えてきた歴史的な課題に対する挑戦なのではないかと、思いはじめました。

「在日の権利の要求」「民族主体性の回復」「民族アイデンティティ回復・強化」 これらのことは在日の歴史的な経緯と現状からして当然のことと言えるでしょう。 しかし私は、在日こそ、まさに「統治参加者」として自分の住む地域において 自由に「意見」の交換を通して「開かれた街作り」を求めるべきなのではないかと思うのです。

私は病床でハンナ・アレントとの出会いに驚き、喜びを隠すことができませんでした。 市長選を単なる政党間の権利闘争でなく、地方自治の新たな仕組み作りを求める という姿勢で臨みたいと願っています。住民が国籍を超え、「意見」の違いを超え、 「開かれた街作り」に参加していくことを求めたいものです。

戦後の日本の地方自治の在り方、その歴史と実態を正確に知る必要があるでしょう。 ハンナ・アレントが触れていなかった多くの問題点もあります(女性の立場、 アメリカの先住民や奴隷制度など)。深く言及していない点もおおくあります。 彼女を絶対視するのでなく問題提起者として捉え、現状への関わり方、関わる視点 として参考にしたいと思います。


-- 崔 勝久
SK Choi
skchoi777@gmail.com
携帯:090-4067-9352