みなさん、この暑さのなかどのように過ごされていますか。
お盆のときには大雨があり、その後は猛暑が続くそうです
から、お体にはご注意を。
「韓国併合」100年にあたっての首相談話は自民や民主
の中からも批判の声があがり、一方、十分でないという声も
ありますが、和田春樹さんが言うように、村山談話より
「一歩前進」というところなのでしょうか。しかし韓国
では厳しい意見がだされているようです。
日本の新聞は中国政府もまた談話を「歓迎」と報道して
いますが、韓国の朝鮮日報は、11日付中国紙・環球時報
のトップ記事を紹介し、「日本が中国を除外し、韓国に
対してだけ謝罪したことは政治的背景があるのではないか」、
「今回の出来事は日本と韓国が手を結び、中国に対処する
転換点になるのではないかとの疑念が生じる」という、
中国の政府発表とは違う一面を報道しています。
これは6者会談を念頭においたものとも読めますが、私は、
大国になった中国が、韓国・日本に対して警戒をにじませた
ものと感じました。いわばこれはいずれもが植民地支配を
強化する国家同士であることを意味します。
日韓両国は自国内の労働力ではやっていけず、廉価で使い
捨てできる外国人の労働力を必要とするに至り、それを
「多文化共生」というかたちで外国人の「統治」をしよう
としています。それを韓国の尹海東さんは、「内部植民地」
と先の「韓国併合」100年を問うシンポで発表していました。
一国内に多くの民族を抱える中国もまた、内陸部に廉価な
労働力が多くあり海外から労働力を入れる必要はないとは
言え、植民地支配をどのように進めるのかという点では、
国民国家の運営という意味では、日本・韓国と同じ問題を
持つと見るべきなのでしょう。この点は、孫歌さんにお会い
したら是非、伺ってみたいですね。
今年の『思想』1月号で、李成市さんが興味深い論文を
書かれています。当時のアカデミズム実証主義歴史家が
いずれも日清・日露戦争、韓国併合に進んだ日本の植民地
主義を批判的に捉えることができず、それを反映させる
かたちで古代史を解釈したというのです。
その中で、「帝国主義」を取り上げる上野千鶴子さんと
石母田正を例にして、その議論の前提になる日本の古代史
(朝鮮支配)は植民地主義歴史観に基づいた誤ったもので、
それを「自明なものとして・・議論される構造に組み込まれ
ている」ということを記しています(141頁)。
私は「韓国併合」100年を問うシンポに参加して懸念を
もったと先のブログで書きましたが、アカデミックな実証主義を
求めると言うことは、過去、決して実際に生起していた国民国家
の植民地支配の動向を批判的に捉えることではなかったという
ことです。今の歴史学者や社会科学者は違うと言えるのでしょうか。
先の尹海東さんは、シンポでの発題をこのような言葉で終え
ました、「新たな転換は、ともすると戦後迎えることになった
新たな植民地主義である可能性もある」。在日朝鮮人を含めた
外国人の「多文化共生」はそのような植民地主義として捉える
べきなのではないでしょうか。このブログをごらんになった
様々な分野の研究者のご意見をお聞かせください。
2010年8月13日金曜日
2010年8月9日月曜日
「韓国併合」100年を問う国際シンポジュームに参加して抱いた懸念
国立歴史民俗博物館主催、「韓国併合」100年を問う会共催、岩波書店・朝日新聞社後援の「国際シンポジューム「韓国併合」を問う」が8月7-8日の2日間にわたって東京大学で開かれました。延べにして1000名を超える、主催者側も予想していなかった大盛況で、会場に入りきれない人も多くいたようです。
「韓国併合」100年にあたり、未だ植民地支配が清算されずにいることを危惧する、もっとも良心的な歴史学者と一般市民が集ったということでしょうか。よく準備されたシンポで、現時点での、日本の学界の「最先端」の問題意識と研究内容が披露されたということなのでしょうか。中塚明先生の講演をはじめ、5つのセッションがあり、「近代の東アジアと「韓国併合」」、「日本の植民地支配」、「戦後日本と植民地支配の問題」、「歴史認識の問題」、「世界史の中の「韓国併合」」についての問題提起と25名もの研究者の発表という形式でした。
講演と問題提起、それに15分くらいの短いものであっても各自の研究発表の内容は十分に準備されたもので、学ぶことの多いシンポでした。しかし2日間、最初から最後の打ち上げのパーティにまで参加した私には、大きな懸念が残ったということを正直に告白せざるをえません。
25名の学者の中で、またフロアーからの一般市民の発言を含めて、日韓両国が「人種的マイノリティ問題を中心にした多文化社会を迎えている」という現状認識をもって、「内部植民地」の問題と発表したのは、韓国成均館大学の尹海東氏、ただ一人でした。彼の発表については総括の中でも取り上げられていたこともあり、後日、みなさんにお知らせします。
これだけ外国人が増え、「多文化共生」政策を日韓両国政府が政策として掲げるということは歴史的にどのような事態なのか、その「多文化共生」とは一体何なのか、私には植民地支配の清算をすべきだという意識をもつ歴史学者が、「多文化共生」政策が尹海東氏のいう「内部植民地」(或いは、西川長夫氏のいう<新>植民地主義)の問題ではないのかということについて一切の関心を示さなかったということに、大きな危機感をいだかざるをえませんでした。歴史学者は実証的な研究を進めながら、今現実社会で生起している「多文化共生」についての明確な見解を示し、植民地支配の問題として警鐘を鳴らすべきだと思います。
立ち話でしたが、それでも東京外大の岩崎稔氏、岩波の小島潔氏などのように、私の外国人の「二級市民」化、「共生」政策の問題点の指摘に大きく頷いていた人もいたということを付け加えておきます。
ついでに私の目の前にちょうど、「8・22日韓市民共同宣言大会」のチラシがあり、「朝鮮植民地支配の清算」を謳っています。しかしそのスローガンは、「平和と共生の東アジアを!」というものです。過去の清算を願い闘う市民もまた、「多文化共生」が「内部植民地」の問題だという認識を持っていないのではないのか、気にかかります。
「韓国併合」100年にあたり、未だ植民地支配が清算されずにいることを危惧する、もっとも良心的な歴史学者と一般市民が集ったということでしょうか。よく準備されたシンポで、現時点での、日本の学界の「最先端」の問題意識と研究内容が披露されたということなのでしょうか。中塚明先生の講演をはじめ、5つのセッションがあり、「近代の東アジアと「韓国併合」」、「日本の植民地支配」、「戦後日本と植民地支配の問題」、「歴史認識の問題」、「世界史の中の「韓国併合」」についての問題提起と25名もの研究者の発表という形式でした。
講演と問題提起、それに15分くらいの短いものであっても各自の研究発表の内容は十分に準備されたもので、学ぶことの多いシンポでした。しかし2日間、最初から最後の打ち上げのパーティにまで参加した私には、大きな懸念が残ったということを正直に告白せざるをえません。
25名の学者の中で、またフロアーからの一般市民の発言を含めて、日韓両国が「人種的マイノリティ問題を中心にした多文化社会を迎えている」という現状認識をもって、「内部植民地」の問題と発表したのは、韓国成均館大学の尹海東氏、ただ一人でした。彼の発表については総括の中でも取り上げられていたこともあり、後日、みなさんにお知らせします。
これだけ外国人が増え、「多文化共生」政策を日韓両国政府が政策として掲げるということは歴史的にどのような事態なのか、その「多文化共生」とは一体何なのか、私には植民地支配の清算をすべきだという意識をもつ歴史学者が、「多文化共生」政策が尹海東氏のいう「内部植民地」(或いは、西川長夫氏のいう<新>植民地主義)の問題ではないのかということについて一切の関心を示さなかったということに、大きな危機感をいだかざるをえませんでした。歴史学者は実証的な研究を進めながら、今現実社会で生起している「多文化共生」についての明確な見解を示し、植民地支配の問題として警鐘を鳴らすべきだと思います。
立ち話でしたが、それでも東京外大の岩崎稔氏、岩波の小島潔氏などのように、私の外国人の「二級市民」化、「共生」政策の問題点の指摘に大きく頷いていた人もいたということを付け加えておきます。
ついでに私の目の前にちょうど、「8・22日韓市民共同宣言大会」のチラシがあり、「朝鮮植民地支配の清算」を謳っています。しかしそのスローガンは、「平和と共生の東アジアを!」というものです。過去の清算を願い闘う市民もまた、「多文化共生」が「内部植民地」の問題だという認識を持っていないのではないのか、気にかかります。
2010年8月6日金曜日
朝鮮学校の「高校無償化」問題はまだ未決、一橋大・鵜飼哲教授より
みなさんへ
一橋大の博士課程の研究者の友人から、メールの転送依頼がきました。
朝鮮学校の「高校無償化」問題で集会をもたれた鵜飼哲教授が、「ゼミ生および友人のみなさん」宛に送られたものだそうです。問題はまだ未決であること、今後さまざまな巻き返しが予想されるということを、記されております。
仙谷官房長官が韓国併合100年に際して、村山談話以上のことを語らせまいとする動きも活発化しているようです。お互いの駆け引きや、政治上の立場があるのでしょうが、私自身は、一歩踏み込んだ談話を「首相の談話」として出してほしいと願いますね。
管首相が国家「君が代」に対する国会での質問に対して、大変見苦しい答弁をしていました。あれでは、「強制はよくない」とした天皇談話より落ちますね。実際の「首相の談話」の内容は仙谷さんがまとめるとのこと。さて、どういう内容になるのでしょうか。
崔 勝久
――――――――――――――――――――――――――――――――
ゼミ生および友人のみなさん
8月3日の「朝鮮学校の「高校無償化」問題を考える学習討論集会」@一橋には多くのゼミ生と友人の方々のご協力、ご参加をいただき大変ありがとうございました。
集会当日に毎日系メディアが流した「無償化」適用の方向という報道は、翌日社民党の議員秘書を通じて確認したところ、文科省内のいわゆる専門家委員会の議論の方向性が示されているだけでまだ確定的な事実ではありません。反対に、この報道をきっかけに、議会での自民党の追及、右派系団体のファックス、メール攻勢が始まっています。これからまだ「ひとヤマもふたヤマも」あることを覚悟しなければなりません。
集会で在日朝鮮人人権協会の金東鶴さんが提起されたように、この局面では適用賛成の意見を文部科学省、首相官邸に集中する運動が必要です。下記のURLをご覧いただきメールを送っていただきたいと思います。また、友人たちにもこの声を広げてください。決定はお盆明けになるという見方が有力です。
集会の主催者である私たちも来週には要請行動を行う予定です。適用が実現してもさらにその先の運動を構想していかなければなりませんが、まずこの局面で力を集中する必要があります。よろしくお願いします。
鵜飼
文科省 https://www.inquiry.mext.go.jp/inquiry38/
首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html
一橋大の博士課程の研究者の友人から、メールの転送依頼がきました。
朝鮮学校の「高校無償化」問題で集会をもたれた鵜飼哲教授が、「ゼミ生および友人のみなさん」宛に送られたものだそうです。問題はまだ未決であること、今後さまざまな巻き返しが予想されるということを、記されております。
仙谷官房長官が韓国併合100年に際して、村山談話以上のことを語らせまいとする動きも活発化しているようです。お互いの駆け引きや、政治上の立場があるのでしょうが、私自身は、一歩踏み込んだ談話を「首相の談話」として出してほしいと願いますね。
管首相が国家「君が代」に対する国会での質問に対して、大変見苦しい答弁をしていました。あれでは、「強制はよくない」とした天皇談話より落ちますね。実際の「首相の談話」の内容は仙谷さんがまとめるとのこと。さて、どういう内容になるのでしょうか。
崔 勝久
――――――――――――――――――――――――――――――――
ゼミ生および友人のみなさん
8月3日の「朝鮮学校の「高校無償化」問題を考える学習討論集会」@一橋には多くのゼミ生と友人の方々のご協力、ご参加をいただき大変ありがとうございました。
集会当日に毎日系メディアが流した「無償化」適用の方向という報道は、翌日社民党の議員秘書を通じて確認したところ、文科省内のいわゆる専門家委員会の議論の方向性が示されているだけでまだ確定的な事実ではありません。反対に、この報道をきっかけに、議会での自民党の追及、右派系団体のファックス、メール攻勢が始まっています。これからまだ「ひとヤマもふたヤマも」あることを覚悟しなければなりません。
集会で在日朝鮮人人権協会の金東鶴さんが提起されたように、この局面では適用賛成の意見を文部科学省、首相官邸に集中する運動が必要です。下記のURLをご覧いただきメールを送っていただきたいと思います。また、友人たちにもこの声を広げてください。決定はお盆明けになるという見方が有力です。
集会の主催者である私たちも来週には要請行動を行う予定です。適用が実現してもさらにその先の運動を構想していかなければなりませんが、まずこの局面で力を集中する必要があります。よろしくお願いします。
鵜飼
文科省 https://www.inquiry.mext.go.jp/inquiry38/
首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html
2010年8月4日水曜日
投稿: 朝日新聞報道を読んでー朝鮮学校無償化問題
崔さん
今朝の朝日新聞一面に「朝鮮学校無償化へ調整」のタイトル記事
を読みました。実施に閣内一部反対の意見もありますが、大勢は
力強く、実現に向け動いたものと感じます。
これは日頃差別の存在を許さぬ皆さんの活動の成果と、人類の歴史
に対し、逆行を阻止する国民の良識が働いた事と思います。
是非この教育の場に於ける人権に関わる事が、現実のものとなること
を祈念致します。
10:8:4日 塚本
今朝の朝日新聞一面に「朝鮮学校無償化へ調整」のタイトル記事
を読みました。実施に閣内一部反対の意見もありますが、大勢は
力強く、実現に向け動いたものと感じます。
これは日頃差別の存在を許さぬ皆さんの活動の成果と、人類の歴史
に対し、逆行を阻止する国民の良識が働いた事と思います。
是非この教育の場に於ける人権に関わる事が、現実のものとなること
を祈念致します。
10:8:4日 塚本
2010年7月30日金曜日
仙谷官房長官と朴鐘碩(日立闘争当該)
7月29日の朝日新聞夕刊の「窓」論説委員室のコラムで、石橋英昭記者が「弁護士政治家」というタイトルで仙谷官房長官と朴鐘碩のことを記しています。40年前の二人の出会いが今日の二人を作ってきたのですが、日本の政治の中枢を担う政治家になった仙谷さんと、40年勤めあげ来年5月に定年を迎える朴鐘碩のことを想うと、不思議な気がします。定年の時の集いはどのようなものになるでしょうか。
以下、コラムの全文を記します。
弁護士政治家 窓 論説委員室から 朝日新聞夕刊7月29日
東大在学中に司法試験に合格した仙谷由人さんが弁護士登録をしたのは、25歳のとき。最初に担当したのが、日立製作所の就職差別事件だった。
在日韓国人の朴鐘碩さんが、国籍を理由に採用を取り消され、入社試験で日本名を使ったことも「ウソつき」だとされた。裁判では不当な民族差別だったと認められ、朴さんが全面勝訴した。
「オマエたち日本人が作り出した差別だ」「この裁判にかかわることでオレは生き方を変える」。深夜までよく青年弁護士と議論したのを、来年日立で定年を迎える朴さんは、覚えている。
40年近くが過ぎ、仙谷さんは官房長官に就いた。戦後補償などをめぐる発言に原点の体験がにじむ。ふらつく政権内では、その調整力が頼りにされる。今もどこか、面倒見の良い、法律事務所のボスといった風情である。
見渡せば、早くに政治家に転じた枝野民主党幹事長、谷垣自民党総裁と、山口公明党代表、福島社民党党首、また横路衆議員議長も弁護士資格を持つ。25日に任期が切れた江田参院議長もそうだ。
与野党ねじれのもと、数を頼んだ乱暴な国会運営はできない。ルールに基づいて、損得を比較考量し、弁論で説得する。求められるのは「法治国会」だ。法律家がこれだけ政治の中心にいるのは、時代の必然だろうか。
週参議員で弁護士出身は現在31名。この中から首相が生まれれば、鳩山一郎以来のこととなる。<石橋英昭>
崔 勝久
以下、コラムの全文を記します。
弁護士政治家 窓 論説委員室から 朝日新聞夕刊7月29日
東大在学中に司法試験に合格した仙谷由人さんが弁護士登録をしたのは、25歳のとき。最初に担当したのが、日立製作所の就職差別事件だった。
在日韓国人の朴鐘碩さんが、国籍を理由に採用を取り消され、入社試験で日本名を使ったことも「ウソつき」だとされた。裁判では不当な民族差別だったと認められ、朴さんが全面勝訴した。
「オマエたち日本人が作り出した差別だ」「この裁判にかかわることでオレは生き方を変える」。深夜までよく青年弁護士と議論したのを、来年日立で定年を迎える朴さんは、覚えている。
40年近くが過ぎ、仙谷さんは官房長官に就いた。戦後補償などをめぐる発言に原点の体験がにじむ。ふらつく政権内では、その調整力が頼りにされる。今もどこか、面倒見の良い、法律事務所のボスといった風情である。
見渡せば、早くに政治家に転じた枝野民主党幹事長、谷垣自民党総裁と、山口公明党代表、福島社民党党首、また横路衆議員議長も弁護士資格を持つ。25日に任期が切れた江田参院議長もそうだ。
与野党ねじれのもと、数を頼んだ乱暴な国会運営はできない。ルールに基づいて、損得を比較考量し、弁論で説得する。求められるのは「法治国会」だ。法律家がこれだけ政治の中心にいるのは、時代の必然だろうか。
週参議員で弁護士出身は現在31名。この中から首相が生まれれば、鳩山一郎以来のこととなる。<石橋英昭>
崔 勝久
2010年7月28日水曜日
横浜市で何が起っているか?―自由社版「つくる会」教科書をめぐって―加藤千香子
横浜市では、「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)の自由社版教科書『新編 新しい歴史教科書』が、昨年夏の採択決定に基き、今年4月より市内18地区中の8地区(港南区、港北区、青葉区、都築区、金沢区、緑区、瀬谷区、旭区)の中学校で使用が義務づけられています。この教科書は、以前から内容における大きな偏りや、間違いが多いことが指摘されていました(採択後にも40ヶ所もの訂正が行われています)が、現在公立中学校では横浜市でしか使用されていない教科書です。
ここでは、横浜市における教科書採択の問題、現在どのような動きが進んでいるか、そしてそれに対抗するための私たちの取組みについて述べたいと思います。
1 採択決定の経緯
教科書採択が決定されたのは、昨年8月4日の横浜市教育委員会でした。横浜市の教科書採択は、すでに2005年から、各学校の意見が排除され、教科書取扱審議委員会の答申をもとに市教委が採択するという手続きになっています。今回の採択は、中田宏元横浜市長(採択決定後に市長辞任)が任命した今田忠彦教育委員長ほか6人の委員の採決によって行われました。その際、他教科が従来通り挙手裁決、歴史だけが無記名投票という不公正な方法がとられ、しかも学校現場の声はもとより教科書取扱審議会答申(答申では自由社の評価は大変低い)すら無視したものであったことが明らかになっています。
また、市教委では、「つくる会」に同調している市民団体が請願してきた採択地区の市内一地区化を方針として決定し、県教委に変更の承認を求めていました。教科書採択後の10月の県教委では、この市内一地区化の件は激論になり、一地区化に反対する渡邊美樹委員が辞任するなどの混乱を引き起こしながらも、承認の決定がされました。この市内一地区化は、現在検定中の「つくる会」系教科書を8地区どころか全市18地区で使用させるための採択を目指しているものと考えられます。
2 採択後の動き
自由社版教科書が採択されたことに対し、横浜市教職員組合(浜教祖)では、自由社版教科書の採択の経過と内容を批判しながら独自に同書の使用を前提とした授業案集『中学校歴史資料集』を作成、今年4月に組合員へ配布しました。これは、「教員の指導上の戸惑いを払拭し、子どもたちの学びを保障する観点から」のもので、教員組合として当然の対応です。
しかし、これに対して市議会で一市議から出た質問を受けた市教委・山田巧教育長は、「教科書の適切な使用等について」(4月28日付)の文書を出し、「横浜市教育委員会が採択した教科書を必ず使用しなければなりません」「教員の管理監督及び教育課程の管理運営を適切に行っていただくよう」といった内容を各中学校長に通達しています。また市教委は『資料集』を「極めて不適切」とし、「今後、このような文書を教員に配布しないこと」「学校ポストについては、今後、職員団体活動に使用しないこと」という「警告」文を浜教組に手渡しました。こうした動きをとらえた『産経新聞』は、5月以降、浜教組の『資料集』配布を「法律違反」行為と断定、紙面第一面で扱うなど激しいキャンペーンをはじめました。さらに、「つくる会」は浜教組への厳重処分を市教委に申し入れ、また5月25日の参議院文教科学委員会でも義家弘介議員(自民)が取り上げています。
この中で持ち出されているのは、教科書使用義務をうたう学校教育法34条に反するという論理ですが、肝心なのは、同じ学校教育法34条の2にある、教科書以外の教材使用の自由が無視されている点です。教科書だけを使って授業をすること自体、現場ではきわめて非現実的といわざるをえませんし、授業に際して多面的な観点や学問的な理解の助けになる教材は不可欠です。浜教組の行為を問題にする側や市教委の動きは、自由社版教科書の使用義務づけの徹底化に加え、教員の教育活動に大幅な制限を課すことで、上からの管理・監督を強めるものにほかなりません。大変大きな問題をはらんでいます。
3 横浜教科書研究会について
昨年秋に発足した私たちの「横浜教科書研究会」では、市民、教職経験者と大学の研究者とで自由社版教科書の内容の検討を進めています。その結果、特定の価値観や道徳を教え込もうとするために生まれる歴史の歪曲や誤り、アジアや世界に背を向けた内向きの「日本人」中心史観、天皇の力の実態以上の評価など、戦前の国定教科書とも酷似している内容が具体的に明らかになってきました。
この検討の成果をもとに、自由社版教科書を使用しなければならない学校現場の先生方
に役立ててほしいと考え、「自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?」Vol.1、Vol.2を作成し、横浜市立全中学校に送付しました。Vol.1は序論にあたるもので、実践編のVol.2では原始・古代・中世・近世を対象に、各時代の全体的な問題点の指摘のほか、32のテーマと8つのコラムを設定し、①学びたいこと、②ここが問題(教科書の問題点)、③アドバイスを具体的に提示しました。この教科書で授業せざるをえない状況に追い込まれた現場の教員の方たちにとって、実践的な力となることをめざして編集したものです。今後、Vol.3近現代編の発行も予定しており、教科書検討の際には、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
この問題は横浜市だけの問題ではありません。目下進行中の中学校教科書検定や来年度の教科書採択ではこうした動きがさらに強まり、全国的にも広がりをみせる恐れもあります。それを食い止めることは言うまでもありませんが、進行しつつある教育現場の管理強化に抗するとともに、これを機にあらためて「歴史」を学びなおしていくような動きをつくっていくことも大切と考えます。みなさま方からのご協力、心より願っております。
※冊子普及や資金カンパにご協力ください。
「自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?」Vol.1 協力金1部300円以上
「自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?」Vol.2 協力金1部800円以上
横浜教科書研究会
〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-2
横浜国立大学教育人間科学部歴史学研究室
電話 045-339-3434 FAX 045-339-3437
メールアドレス yokohamakyokasho@yahoo.co.jp
(加藤千香子)
ここでは、横浜市における教科書採択の問題、現在どのような動きが進んでいるか、そしてそれに対抗するための私たちの取組みについて述べたいと思います。
1 採択決定の経緯
教科書採択が決定されたのは、昨年8月4日の横浜市教育委員会でした。横浜市の教科書採択は、すでに2005年から、各学校の意見が排除され、教科書取扱審議委員会の答申をもとに市教委が採択するという手続きになっています。今回の採択は、中田宏元横浜市長(採択決定後に市長辞任)が任命した今田忠彦教育委員長ほか6人の委員の採決によって行われました。その際、他教科が従来通り挙手裁決、歴史だけが無記名投票という不公正な方法がとられ、しかも学校現場の声はもとより教科書取扱審議会答申(答申では自由社の評価は大変低い)すら無視したものであったことが明らかになっています。
また、市教委では、「つくる会」に同調している市民団体が請願してきた採択地区の市内一地区化を方針として決定し、県教委に変更の承認を求めていました。教科書採択後の10月の県教委では、この市内一地区化の件は激論になり、一地区化に反対する渡邊美樹委員が辞任するなどの混乱を引き起こしながらも、承認の決定がされました。この市内一地区化は、現在検定中の「つくる会」系教科書を8地区どころか全市18地区で使用させるための採択を目指しているものと考えられます。
2 採択後の動き
自由社版教科書が採択されたことに対し、横浜市教職員組合(浜教祖)では、自由社版教科書の採択の経過と内容を批判しながら独自に同書の使用を前提とした授業案集『中学校歴史資料集』を作成、今年4月に組合員へ配布しました。これは、「教員の指導上の戸惑いを払拭し、子どもたちの学びを保障する観点から」のもので、教員組合として当然の対応です。
しかし、これに対して市議会で一市議から出た質問を受けた市教委・山田巧教育長は、「教科書の適切な使用等について」(4月28日付)の文書を出し、「横浜市教育委員会が採択した教科書を必ず使用しなければなりません」「教員の管理監督及び教育課程の管理運営を適切に行っていただくよう」といった内容を各中学校長に通達しています。また市教委は『資料集』を「極めて不適切」とし、「今後、このような文書を教員に配布しないこと」「学校ポストについては、今後、職員団体活動に使用しないこと」という「警告」文を浜教組に手渡しました。こうした動きをとらえた『産経新聞』は、5月以降、浜教組の『資料集』配布を「法律違反」行為と断定、紙面第一面で扱うなど激しいキャンペーンをはじめました。さらに、「つくる会」は浜教組への厳重処分を市教委に申し入れ、また5月25日の参議院文教科学委員会でも義家弘介議員(自民)が取り上げています。
この中で持ち出されているのは、教科書使用義務をうたう学校教育法34条に反するという論理ですが、肝心なのは、同じ学校教育法34条の2にある、教科書以外の教材使用の自由が無視されている点です。教科書だけを使って授業をすること自体、現場ではきわめて非現実的といわざるをえませんし、授業に際して多面的な観点や学問的な理解の助けになる教材は不可欠です。浜教組の行為を問題にする側や市教委の動きは、自由社版教科書の使用義務づけの徹底化に加え、教員の教育活動に大幅な制限を課すことで、上からの管理・監督を強めるものにほかなりません。大変大きな問題をはらんでいます。
3 横浜教科書研究会について
昨年秋に発足した私たちの「横浜教科書研究会」では、市民、教職経験者と大学の研究者とで自由社版教科書の内容の検討を進めています。その結果、特定の価値観や道徳を教え込もうとするために生まれる歴史の歪曲や誤り、アジアや世界に背を向けた内向きの「日本人」中心史観、天皇の力の実態以上の評価など、戦前の国定教科書とも酷似している内容が具体的に明らかになってきました。
この検討の成果をもとに、自由社版教科書を使用しなければならない学校現場の先生方
に役立ててほしいと考え、「自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?」Vol.1、Vol.2を作成し、横浜市立全中学校に送付しました。Vol.1は序論にあたるもので、実践編のVol.2では原始・古代・中世・近世を対象に、各時代の全体的な問題点の指摘のほか、32のテーマと8つのコラムを設定し、①学びたいこと、②ここが問題(教科書の問題点)、③アドバイスを具体的に提示しました。この教科書で授業せざるをえない状況に追い込まれた現場の教員の方たちにとって、実践的な力となることをめざして編集したものです。今後、Vol.3近現代編の発行も予定しており、教科書検討の際には、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
この問題は横浜市だけの問題ではありません。目下進行中の中学校教科書検定や来年度の教科書採択ではこうした動きがさらに強まり、全国的にも広がりをみせる恐れもあります。それを食い止めることは言うまでもありませんが、進行しつつある教育現場の管理強化に抗するとともに、これを機にあらためて「歴史」を学びなおしていくような動きをつくっていくことも大切と考えます。みなさま方からのご協力、心より願っております。
※冊子普及や資金カンパにご協力ください。
「自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?」Vol.1 協力金1部300円以上
「自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?」Vol.2 協力金1部800円以上
横浜教科書研究会
〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-2
横浜国立大学教育人間科学部歴史学研究室
電話 045-339-3434 FAX 045-339-3437
メールアドレス yokohamakyokasho@yahoo.co.jp
(加藤千香子)
2010年7月27日火曜日
韓国の「多文化共生」の実態―国際結婚が10%を超える!
韓国の「多文化共生」の実態―国際結婚が10%を超える!
今朝のテレビ朝日のスーパーモーニングで、韓国の国際結婚の実態が報道されていました。2000年は3.5%であったものが、2009年には10.8%になったそうです。それだけ国際結婚が多いのは、農村に嫁に行く韓国の女性が少なくなり、子供を産み、働いてくれる若い嫁を海外から迎えるためという説明でした。現在韓国農村の3割は国際結婚によるそうです。そこには色濃くジェンダー問題が潜んでいます。
7月25日(日)に日本学術会議主催の「グローバル化するメディア社会と文化的市民権」の公開講演会があり、「市民の会」の伊藤さんと私が参加しました。そこでの基調報告は韓国延世大学の金賢美教授によるもので、大変興味深いものでした。今朝のTV報道でも解説されていましたが、国際結婚の対象は中国、ベトナム、日本、イズべキスタン、カンボジア等にも及び、その仲介業者は現在、未登録業者を含めると2000社にもなるとのことです。TVでは人身売買、奴隷売買と言ってましたね。その通りです。
金教授の講演からは、韓国はNGOの活動が活発で、政府は外国人労働者を受け入れる体制を迅速に法制化している実態が伝わりました。NGO側は、「文化的市民権」ということで、「同化」を進め「韓国らしさ」を当然視・強要する政府の政策と、それを受け入れる一般社会に対して、「多文化共生」の必要性とともに韓国社会の閉鎖性に批判的です。金教授は、マスコミとNGOは外国人の人権(「再配分」と「承認」)の重要性を強調した論陣を張っているものの、当事者不在である実態を指摘されていました。
講演を聞いた多くの人は、韓国の「多文化共生」政策が進んでいると感じたかもしれませんが、私見では、勿論韓国から学ぶこともありますが、それは表面的な分析で、韓国は政府(国家権力)の力が強く、それにもろに対抗するためにNGO活動が逆に盛んにならざるをえない、何故ならば、地方自治の実態があまりに「未熟」だからだと私は分析します。NGO側の運動も大きくは、外国人の人権を謳いながらも「多文化共生」政策を裏から支える形になっており、その主張はキリスト教の影響か(?)博愛主義的で観念的だという印象を受けます。
「多文化共生」は韓国の例を見ても、日本と同じく、結局は国民国家の強化につながり、マジョリティのあり方を根本的に批判、変革する視点が圧倒的に希薄です。外国人をどう受け入れるのかというレベルで留まっています。
私は今いくつかの論文を書いていますが、マイノリティ問題はマジョリティ問題という曖昧な概念でなく、マジョリティの何が問題なのか、そこを徹底的に論議する必要があると思います。私の結論は、日本、韓国における「住民主権に基づく住民自治」の仕組み(及びそれを必要と考える市民の考え方が希薄)をつくる過程で、それを外国人と一緒に論議しながら、マジョリティを変えていかなければならないというものです。
詳しくは、「オルタナティブ提言―「在日」の立場から」(季刊『ピープルズ・プラン』)、及び「人権の実現―「在日」の立場から」『人権の実現』(斎藤純一編)、(『講座 人権論の再定位』(全5巻、法律文化社)で拙論の掲載が決定したらお知らせします。
今朝のテレビ朝日のスーパーモーニングで、韓国の国際結婚の実態が報道されていました。2000年は3.5%であったものが、2009年には10.8%になったそうです。それだけ国際結婚が多いのは、農村に嫁に行く韓国の女性が少なくなり、子供を産み、働いてくれる若い嫁を海外から迎えるためという説明でした。現在韓国農村の3割は国際結婚によるそうです。そこには色濃くジェンダー問題が潜んでいます。
7月25日(日)に日本学術会議主催の「グローバル化するメディア社会と文化的市民権」の公開講演会があり、「市民の会」の伊藤さんと私が参加しました。そこでの基調報告は韓国延世大学の金賢美教授によるもので、大変興味深いものでした。今朝のTV報道でも解説されていましたが、国際結婚の対象は中国、ベトナム、日本、イズべキスタン、カンボジア等にも及び、その仲介業者は現在、未登録業者を含めると2000社にもなるとのことです。TVでは人身売買、奴隷売買と言ってましたね。その通りです。
金教授の講演からは、韓国はNGOの活動が活発で、政府は外国人労働者を受け入れる体制を迅速に法制化している実態が伝わりました。NGO側は、「文化的市民権」ということで、「同化」を進め「韓国らしさ」を当然視・強要する政府の政策と、それを受け入れる一般社会に対して、「多文化共生」の必要性とともに韓国社会の閉鎖性に批判的です。金教授は、マスコミとNGOは外国人の人権(「再配分」と「承認」)の重要性を強調した論陣を張っているものの、当事者不在である実態を指摘されていました。
講演を聞いた多くの人は、韓国の「多文化共生」政策が進んでいると感じたかもしれませんが、私見では、勿論韓国から学ぶこともありますが、それは表面的な分析で、韓国は政府(国家権力)の力が強く、それにもろに対抗するためにNGO活動が逆に盛んにならざるをえない、何故ならば、地方自治の実態があまりに「未熟」だからだと私は分析します。NGO側の運動も大きくは、外国人の人権を謳いながらも「多文化共生」政策を裏から支える形になっており、その主張はキリスト教の影響か(?)博愛主義的で観念的だという印象を受けます。
「多文化共生」は韓国の例を見ても、日本と同じく、結局は国民国家の強化につながり、マジョリティのあり方を根本的に批判、変革する視点が圧倒的に希薄です。外国人をどう受け入れるのかというレベルで留まっています。
私は今いくつかの論文を書いていますが、マイノリティ問題はマジョリティ問題という曖昧な概念でなく、マジョリティの何が問題なのか、そこを徹底的に論議する必要があると思います。私の結論は、日本、韓国における「住民主権に基づく住民自治」の仕組み(及びそれを必要と考える市民の考え方が希薄)をつくる過程で、それを外国人と一緒に論議しながら、マジョリティを変えていかなければならないというものです。
詳しくは、「オルタナティブ提言―「在日」の立場から」(季刊『ピープルズ・プラン』)、及び「人権の実現―「在日」の立場から」『人権の実現』(斎藤純一編)、(『講座 人権論の再定位』(全5巻、法律文化社)で拙論の掲載が決定したらお知らせします。
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