2011年2月14日月曜日

川崎の港湾・臨海部を考えるー(1)基本的な視点の提示

川崎市が横浜と東京と連合して「京浜港」として国の指定を受けました。2大ハブ(拠点)港の一つに選ばれたということです。その問題点を示し、同時に港・臨海部を考える視点を提示しました。添付資料をお読みください。

大体、ブログの原稿を書き上げていたのですが、今朝、川崎市財政部のX課長とお会いし、本当に1000億円の予算を組むのか、そのうち三分の一を市が負担するというのは本当かなどを確かめに伺いました。氏は大変丁寧にこのプロジェクトの背景、進行状態(議論されていない部分を含めて)を説明してくださり、改めて原稿を書き直した部分も多くあります。

市民がただ意見を述べ、行政をそれを聞き置いたり採用したりするのは「対話」ではなく、その議論及び政策決定の過程に市民が参加することの重要性をお話しし、改めて、行政と市民、それに超党派の議員、有識者を交えて議論を積み重ねていくことがいかに大切か、再確認した次第です。

このことはしばらく何回かブログで展開いたします。

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川崎の港湾・臨海部を考えるー(1)基本的な視点の提示

今、私の手元に(財)政治経済研究所から発行された3冊の小冊子があります。「川崎港東扇島 コンテナターミナル・ファズ物流センター問題―その破綻の軌跡と解決策」(2001年8月)、「川崎市の土地行政の変遷と今日の課題―未利用地(『塩漬け土地』)・土地開発公社問題」(2001年11月)、そして10年経って今年発行された「川崎港の未来は・・・国際コンテナ戦略港湾政策は川崎市と市民生活を豊かにできるのか」(2011年1月)です。

この3冊の報告書で明らかにされたことは、川崎市が保有する土地や港湾の致命的な問題(既に第三セクターのKCT・川崎コンテナ・ターミナルは破産し、現在、市の直営)は、すべて国の政策が先行し、それに呼応するかたちで川崎市が国や民間からの資金を投入した結果、生起したものであるということです。そしてそのパターンは新たな民主党政権になっても踏襲されようとしています。「国際コンテナ戦略港政策」です。これは羽田空港のハブ(拠点)化政策と合わせ、新たな国策として制定されたものです。これは過去の過ちを総括して今後の地域社会に貢献するものなのでしょうか?

港湾の問題は都市計画と一体化したものであると既に国が明言しています。従って、川崎市の港湾問題は臨海部のあり方、地域社会・日本社会のあり方と不可分であり、港湾の問題を通して、展望がもてない臨海部の問題の所在を知ることになるのです。住民の寄りつくことのない臨海部は、国策によって海を埋め立て作られた重化学工業(鉄鋼や石油精油の工場)がその大部分を占めています。これまでの自民党時代からの失政の上にその総括なく、横浜市と東京都との連合で国の二大拠点に選定された港湾政策ははたして「国際競争力の強化」につながり、低迷する日本全体の港湾を活性化させ、地域社会に繁栄をもたらすものなのか、そしてそれは未来につながるものであるのか検証されなければなりません。これらの問題を何回かに分けてみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

先日、私は「日本共産党川崎市議団の『委託研究報告書』完成!報告のつどい」に参加し、報告書の作成者である二人の専門家、研究者の話しを聴きました。10年前の川崎港の「コンテナターミナル・ファズ物流センター問題」報告書作成に関わっていた二人の講演は私には大変刺激的でした。話の内容は、過去の港湾政策の失政にはあまり触れず、今の「国際コンテナ戦略港湾政策」の問題に終始したものでした。それでも控えめな表現でしたが、どのように過去の過ちを総括しているのかという問いかけは、国や市当局だけに向けられたものでなく、私自身を含め、市民サイドはこの間、10年前のコンテナターミナルとファズ(Foreign Access Zone)が抱えていた問題をどれほど深く検証し、臨海部のあるべき姿について論議してきたのかという、市民の責任を問うているのではないかと私は受け留めました。

私見では、10年前の報告書にあった、CTとファズの失敗の背景として国の政策決定過程の問題(専門委員会の役割)もさることながら、「徹底したディスクロージャー」「公正な専門家の分析」「市民の討議」の3点こそが膨大な投資を要する港湾政策になくてはならないという指摘は、今回の「国際コンテナ戦略港湾政策」問題を論議するに際しても全く同じく当てはまると思います。

結論的に言うと、世界の貿易の中でアジアの占める割合が多くなり、韓国の釜山、上海、香港、台北などの港が既にハブ(拠点)港としての実績を上げ、自国内だけでなく、そこを中心にして近隣の国々にも積み替え輸送するシステムが出来上がっており、欧米の航路は最も効率のよい港としてそれらのアジアのハブ港を利用しているのに、これまで失敗してきた港湾政策を「選択と集中」で阪神と京浜の2港に絞ることによって「国際競争力」をもつことができるのでしょうか。

既にオーバーキャパシティ(過剰施設)で大型船は来ずコンテナも集まらない川崎港を、停滞し始めている欧米用にさらに拡大する方針に無理があるのではないか、ハードとソフトの両面ではるかに先を行くアジア港湾の後追いではらちがあかないのではないかという疑問が残ります。それに24時間の積み下ろし作業は高賃金の日本で可能でしょうか。日本海岸にある多くの港は既に目の前の釜山をハブ港としているのに、それを止めさせて積み荷を遠く離れた阪神と京浜の港に引き戻すことができるのでしょうか。それに国際基準のコンテナを全国に輸送するには、日本国内の道路やトンネルなどのインフラはそれらを受け入れる整備がなされてないと言うのです。

その話を聴いた会場からは、どうしてそのような不条理な決定がなされるのかという質問が湧きあがりました。講師は、それは国の官僚の判断であると説明していましたが、それは金太郎飴のように、(ダムと同じく)中央政府が決定した政策に各地方自治体が便乗してどこでも同じようなことをやってきたという意味なのでしょう。その過ちは、都心に近く、本来もっとも付加価値の高い場所に人が近づくことのできない石油コンビナートや鉄鋼を中心とした重化学工業地帯をつくりあげた時から始まっているのです。そのような臨海部から必然的に公害が発生し、多くの市民に危害を加えてきました。その問題はまだ完全に解決されたと言えない状態です。

保守、革新を問わずに、川崎市政はそのような工業地帯からの法人税(30%を超える)によって川崎市民の福祉政策(そこに違いはあっても)をまかなってきました。そのやりくりのために、世界的に見ても新たな発展の余地があり、十二分に付加価値が付く産業に転換させ、市民の憩いの場となるべき可能性のある臨海部を放置し続けてきたのです。

臨海部は川崎全体の2割の面積で、そのうちJFEのような鉄鋼会社は6割を占め、石油関係をいれると7-8割になると思われます。しかしグローバリズムによる世界の動きは想像以上に速く、臨海部の多くを占めるそれらの装置産業は早晩、「縮小と統合」の決断を迫られるでしょう。それまで私たち市民はただ手をこまねいて待つしかないのでしょうか。私たちは50年、100年先の最も付加価値のつく海辺の臨海部のあり方を議論しなくていいのでしょうか。それには何よりも、行政パーソンだけでなく、市民が参加して都市計画そのものの政策論議、決定過程に加わる制度の保障が必要です。どうせ東京と横浜と一緒にやるなら、東扇島にかけようとする橋に鉄道を通し東海道線と繋げてはどうか、こんな発想が縦割り行政にできますか? 環境都市・川崎に相応しいと思いますが、阿部市長、いかがでしょう?

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