2011年2月23日水曜日

日立の組合の実態ー「企業内植民地主義」 朴鐘碩

「企業内植民地主義」 NO.2 朴鐘碩

企業社会は、春闘が始まった。組合幹部だけが騒いでいる。現場は春闘と関係ない白けた世界である。組合から組合員に春闘方針、労使交渉の経過説明は一切はない。組合員は、春闘に関心はない。黙ってひたすら業務に励んでいる。春闘の主役は組合幹部と経営者の一部にすぎない。労使幹部で予め決めた「結論」を導くために、スケジュ-ル、シナリオを作り、それに沿って組合員にものを言わせず労使交渉を進める。

組合掲示板に「春闘スト権委譲投票」が公示された。組合掲示板の前に立ち止まって読む組合員の姿を見たことがない。私が役員選挙に立候補したとき、結果を見る組合員の姿を見たことがある。私が近づくと同時に周囲を気にしながらその場から離れる組合員がいた。組合員掲示板をじっくり読むことさえビクビクしながら周囲に神経を使わなければならない職場環境である。

「春闘スト権委譲投票」とは何か、その意味を理解していない組合員もいる。何故「スト権委譲投票」があるのか、誰がどこにスト権を委譲するのか、何故委譲しなければないないのか、議案は組合幹部が勝手に決定しておきながら、何故スト権は投票で決めるのかと疑問を感じる。私は、毎年執行部に質問しているが回答はない。

評議員は、組合員名簿で投票しない組合員をチェックしている。評議員は、意図的に管理職である上司、周囲の組合員に聞こえるように、組合員に「投票しろ!」と恫喝する。組合は、組合員が投票を拒否できないように抑圧的な職場の雰囲気をフルに活用している。評議員の威圧的な姿勢に「投票しない」とはっきり拒否する、できる「勇気ある」組合員はいない。投票用紙は立会人の前で記入する。

組合員から問題点を指摘されてもそれを平気で無視して毎年このような方法で選挙は強行されるため、普段、組合活動に関心はなく沈黙し、業務に追われている1500名近い組合員は、選挙になれば100%近い高投票率である。組合組織のやり方の問題、矛盾を指摘する私のmailを読む組合員は「投票は強制されるもではない。したくなければしなくてもいい」と理解したのか、投票率は85%にまでに下がった。

今回、なぜか、私の職場(選挙区)は、評議員から毎年mail展開されていた投票通知も恫喝もなかった。投票選挙を実施している様子もなかったから、私がいる職場(選挙区)の投票率は(毎年)低いと推測する。各職場選挙区の投票率、選挙結果は公開しない。それでも支部全体の委譲賛成投票は96%を超えている。「春闘スト権委譲投票」の説明はなくても、組合活動に関心がなくても組合員は沈黙し投票する(させられる)。組合幹部は、組合員の労働条件を経営者に要求しているが、組合員は春闘について一切話さない、話せない。組合員から見向きもされない掲示板だけが黙って組合員に語りかけている。

このような職場環境を作っておきながら、中央労組の「職場討議資料」である機関紙は、「会社より提案された具体的な見直し案を基に、職場意見を踏まえた論議を行ない、・・中央委員会において、一定の結論を得ました。各支部・分会においては、職場討議を行ない・・中央委員会に意見を持ち寄られる要請します」と書いている。支部「組合ニュ-ス」も「支部としては中執見解を支持したいと考えます。各職場区におかれましては、意見収集を実施の上・・評議員会に意見・要望と、賛成・反対の態度をお持ち寄りください。」と記している。

組合、評議員は、春闘方針を説明しない。職場討議を実施せず組合員の意見を聞こうとしない。議論もしない。組合員は「意見・要望と、賛成・反対の態度」表明する立場、状況に置かれていない。意志表明することもできない。ものが言えない。沈黙を強要されている。このような状況で、日立中央労組は、勝手に「一定の結論」を決め、支部は「中執見解を支持」している。「会社より提案された」案が「結論」となり、それを前提に春闘のシナリオを決めているようだ。

組合は、ものを言わ(え)ない組合員の委員を集めて「定期大会、中央委員会、代表者会議」などを開き、議案に沿った「結論」を前提にした委員の声を「意見・要望」として機関紙に掲載するが、議案に対する問題点、質問は全くない。「意見・要望」は形式的に受け付けるが、執行部への批判、質問は一切受け付けない。職場組合員から意見・要望・質問は出ることはないから、議案は自ずと結論となる。経営者幹部と組合執行部の思い通りの交渉ができる。ものが言えない組合員の労働条件は、このように決まる。

これは、Sweetheart agreementである。民主党政権を支える連合(労組)幹部と経団連経営者の「馴れ合い」による労働者にとって不利な労使交渉と言える。組合幹部は、組合員から執行部への批判、問題、矛盾を隠蔽し、組合員を沈黙させることによって組織の温存と幹部の延命、経営者の利潤論理のバランスを図ることができる。元組合員であった経営者幹部はじめ現場の管理職は十分解っていることである。世界は、弱者である民衆の人間性を否定し人権を弾圧・抑圧する国民(独裁)国家に囲まれている。企業社会は、その「独裁」(「植民地主義」)を裏付ける一つの縮図といえるかも知れない。

春闘要求の「組合ニュ-ス」は、4月の統一地方選(横浜市議)候補者を応援する記事も掲載している。組合会館は既に「選挙事務所」に変わっている。目的は不明だが「春闘高揚ボウリング大会」を知らせる記事もある。参加する組合員たちは、ボウリングしながら春闘について活発な議論をするのか。

組合支部から職場評議員を通じて、説明もなく以下のmailだけが組合員に展開された。
■ 第一次団体交渉
評議員会にて2011年春闘の要求安に関して全会一致で可決され、支部として、この結論を持って日立労組中央委員会に臨みました。中央委員会では、賃金・一時金に関する要求案が満場一致で可決され、第一次交渉で要求案が提出され、2011年春闘がスタ-トしました。

企業社会で生きる労働者、エンジニアは、組合費だけ納め、経営者・組合のやり方に疑問・問題・矛盾を感じても生き延びるために沈黙するしかないのか。

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